生きるのはなぜ苦しいのだろう、つらいのだろう。いや、だからこそ喜びを感じ得るのだ。闇があるから光が分かる。この世はあなたが必要だ。感情回復『詩的ぶるぅすメソッド』申込はメッセージフォームから。
時には感傷的になりたい人へ
左手首 切り落としたいんだ 温もりがまだ残っている どれほど重ね合わせたろう 青く未熟な僕の未来 僕は自分に負けたんだ この左手は意味を失った あなたの手を引けないのなら 残った温もりさえも罪だ だとしたら切り落とさずに 罪を握ったまま生きるしか
蘇生 もう何年になるでしょうか あなたが阿蘇の雲になってから わたしは現実から逃げていました どうにかして雲に近づこうとしました 掴めるはずもない雲を掴み 何もない手のひらばかり見ていました ある時あなたの絵を見つけました 押入れにひっそりと置かれていました 白く雲が帯をな...
サンデー せっかくの休みなのに なんてきみは言うけれど 戦いに疲れた兵士は 銃さえも枕にできる きみはもはや何も言わず 甘い匂いを漂わせた 疲れた体に甘い物なんて 誰が決めたか知らないが ぼくはまんまと罠にかかり サンデーを頬張り始めた
ジンジャーエール シャウシャウ 悲しい時は泣け 涙が出なけりゃ一気飲み シャウシャウ 悲しい時は泣け 涙が出なけりゃもう一杯 シャウシャウ 美しきジンジャーエール 刺激の数だけ悲しくて 刺激の数だけ明日がある
蛹 蛹(さなぎ)は何思う じっとしているこの時を 蛹は何思う 殻を破り見える世界を 蛹は何思う もしもこのまま目覚めぬ時を 蛹は何思う 自分が何の蛹か知りもせず
天泣(てんきゅう) ひゅう 雲は無く 天は泣く 人の目に 届く間に ひとつ消え ふたつ消え ただ一涙(いちるい) 残るのみ
いちばんむし いちばんむしがなきだした むしむしあつい盆の暮れ いちばんむしがなきだした たったひと夜のすずかぜに りーりる りーりる ふるさとよ りーりる りーりる くちずさむ いちばんむしがなきだした かなわぬゆめのいつとせか
名残り蝉 もう会うことはないと 予感を巡らせた晩夏 お互いのためになど 名目はもうたくさん 僕のわがままを どうか許しておくれ ちっぽけな命と ちっぽけな心の 身代わりとなって 名残り蝉はなく
沈まぬ忘却 北極グマは呻(うめ)いた 忘れられないのだ すべて覚えている 北極での出来事を 吹雪に身を潜めた日も 初めて見たオーロラも 親と別れた日の朝も 沈まぬ陽に去った恋も すべて覚えている あまりに眩しすぎるのだ 忘れることができるなら どん...
瘤 何事も起こらない方が 幸せなのだろうか もしそうだとすれば 出会わなかった方が 良かったのだろうか きみはどう思う? 何事も起こらない方が 幸せなのかもしれない だけどいくつもの瘤(こぶ)は まだ赤みを帯びていて 次第にひいてゆくものと わかっ...
電車が見える窓 あっという間に 五年が過ぎて きみの笑い顔も 二人の休日も あらゆる思い出は 過ぎ去る電車の フィルムのような窓に 映し出されては あっという間に 目の前の時間から 消えてしまった そしてぼくはぼくで 窓に寄りかかり 次のフィル...
雨の自由が丘 パン屋の二階から見える 雨の自由が丘は 人と車と男女とが 所狭しと行き交って 日が暮れた地面には 七色の光が跳ね返る 雨がわたしを外へ出し 雨がわたしを惑わせて 雨がわたしを店内へ アコーディオンの曲が流れ ガーリックの匂いが指に コ...
哀しいうた 哀しいうたは嫌いですか? 哀しいうたは嫌いですか? 父親は永遠ですか? 母親は永遠ですか? 故郷は不変ですか? あの川は不変ですか? 友人は絶対ですか? 恋人は絶対ですか? わたしにはわからない わからないからでしょうか 哀しいことを嫌いになれず 哀しいうたを嫌いにな...
青い椿 どこからか集まってきた水は いつしか深い青を湛えて わたしの中の底の底を 小さな渦をつくりながら 命の果てまで流れてゆき 恐ろしく冷たいこの河が 恐らくわたしの源で いくら熱い湯を浴びても いくら熱い茶を飲んでも 温まらないのはこのためで だけど悲しいことはなく 冷たい手...
ぼっくいと歯形 フクロウが寝床へ入り アサガオが目を開けた頃 きみはようやくその体を 微睡(まどろ)みへと引き渡した ほんのさっきまではまるで 蛇がぼっくいに咬みつき まったくの虚しい歯形を 食い込ませているように いつまでも断ち切れぬ未練を 部屋の中へ燻(く)ゆらせていた 太陽...
栗花落(つゆり) 花は落ちる 雨の重みに 耐えかねて 花は落ちる 空の重みに 耐えかねて 花は落ちる 恋の重みに 耐えかねて
鈴のね ちりぃん ちりぃん わたしの中で かなしく響く 誰かといると 音は紛れて それはほとんど 聞こえないけど ひとりでいると 確かな音が わたしの中に 聞こえてくる ちりぃん ちりぃん ひとりでいると かなしく響く
嘘みたいな本当の詩(うた) 自分の知らない 誰かが死んだ 自分の知らない 誰かが死んだ 自分の知らない 誰かが死んだ 自分の知らない 誰かが死んだ 知らない誰かが 知らない誰かが 知ってる誰かが 知らない誰かが 嘘みたいに 死んでしまった
華火大会 蒸し返すような地べたに 並んで座った華火の夜 無声映画を観ているように 光だけが顔を照らす 人のざわめきも聞こえない 炸裂音さえも聞こえない 感覚ひとつきかなくなって 微かな温度を感じはじめた やがて温度は確かなものになり 熱っぽいものを帯びてくる 空には熱を奪われた華...
指先の環 冷えたグラス テーブルの跡 丸いビーチを 指でなぞった 陽が落ちれば 恋人になった 世の中のことは どうでもよかった 少年少女の 覚束ない環 途切れては着き 途切れては着き 指先の雫は 遠い夢の環