生きるのはなぜ苦しいのだろう、つらいのだろう。いや、だからこそ喜びを感じ得るのだ。闇があるから光が分かる。この世はあなたが必要だ。感情回復『詩的ぶるぅすメソッド』申込はメッセージフォームから。
旅に出たいと思っている人へ
薄紫 東海道線は走る 小雨混じりの朝 軽やかな列車の音 乗客は伏眼がち それは唐突だった 窓が景色を切った 薄紫の海だった どこまでも続いていた 窓の奥の奥まで 薄紫は続いていた 伏眼がちだった乗客も やはり薄紫を見ていた
宍道湖(しんじこ) 信じている 誰に何を言われようとも どのような侮辱を言われようとも どのような軽蔑の目で見られても わたしは堪える わたしは信じている すべての疑念は すべての動揺は すべての悔恨は この夕景とともに この夕景とともに
空にはいつもウミネコがいた なぜ私の旅先に 海沿いが多いのか きっと道が続いているから きっとそこには人がいるから 私は続く道を求めていた 私は人のいる所を求めていた なぜ私の旅先に 海沿いが多いのか 近頃やっとわかった気がする
のんき通り 時代に分断された通りは その名のとおりのんびり時を経て まったく取り残されてしまった 閉じられたままのシャッター 二度と火が灯ることのない看板 ひび割れた壁とすすけた窓 それでものんびり時を経て ぽつりぽつり色は塗り替えられ なぜか楽しそうにしている人々 時代に...
夢とバス 乗客は僕一人 きっと終点まで 最後の乗客だ いくつの停留所を 素通りしただろう 僕と運転手は 無言のまんまで 決められた道を 走り抜けてゆく ねえ運転手さん ちょっと寄り道してさ うまいもんでもさ 食べに行こうよ どこか知らない? そうしたいけどねえ 仕事中だからねえ ...
青柏祭(せいはくさい) そら曳(ひ)け そら曳け わっしょい わっしょい どんどん 曳け曳け わっしょい わっしょい さあさあ 来た来た 曲がり角に来た ここは任せろ えいやっほう おっとあぶない ふり落とされるな いった いったぞ よろこべ さけべ そら曳け そら曳け わっしょ...
海が見えた車窓から この一筋の畝(うね)は 茫々(ぼうぼう)と海沿いを走り 盛り上がり具合はまるで 鮮烈な蚯蚓(みみず)腫れが 体に残ってしまったようで 痛みも痒みも無いのに 疼(うず)くような熱さがまだ 一筋の中に残っていて ほんの数えるほどの季節 この上をどれほどの眼差しが ...
石垣塀 このありありと続く石垣 築き上げた年月を偲ぶ 手に触れる冷たさには 歴史の雨が染み込んでいる 人の行き来が頼りであった 人の行き来より仕方なかった ある者は危うく下敷きを免れ ある者は不幸にも下敷きになった 手の冷たさと湿り気は 苦(にが)い思いが込められている だからこ...
利根川 どうして河は 流れ続けるのだろう どうして水は 涸れずに在るのだろう 舟を漕ぐ者は 風景のように過ぎゆく ちぎられた花は はしゃぐように波打つ ちっぽけな疑問は 水源のように溢れ 巡りゆく時は 大海へと注がれる
岐阜城 金華山 長良川 舟々 萩 月 灯(ひ) 長良川 金華山
湖東の国 いつでもそこに 湖(うみ)があるから いつでもそこに 湖があるから どこへだって行ける 戻ることもできる 湖の国の人間は 湖を忘れることはない 淡い青を称え 淡い風を匂う
草津追分 右に行きゃあ 東海道は膝栗毛 左行きゃあ 中山道の洗礼よ 草津追分 どっち向けば極楽 草津の川も目の上で わらわらさあさあ 草津追分 どっち向けば極楽 湯気もさかんに ちょいとさあさあ
湖面の造形 嘘を造るのが人間ならば 真実を造るのが湖だ 風がやめば鏡となり 魚がはねれば波を打つ 地の底がひっくり返れば ぼとぼとこぼれ落ちるだろう さあ手をそえて受けるがいい 一滴たりともこぼしてはならぬ そしてすべて飲み干すがいい 鯰(なまず)ぐらい驚くことではない 列車が遠...
かもめ なんの音だろうか どっどっどっどっ びりびりと響いてくる どっどっどっどっ やけに落ち着かない ぐらぐらぐらぐら だけどわくわくする感じ ぐらぐらぐらぐら 汽笛が鳴った そうかもうすぐか ようやく出航するのか 波は高いらしい うろたえる声がする なに行ってみなければ わか...
星が降りた夜景 ほのかな夜景 百の光の夜景 星の瞬きのような ぎらぎらすることなく 息をする程度でいい ささやく程度でいい やさしくやさしく 美濃の町はある
木曽路 ひとりきりで ひっそりとゆく ひとはいない ひとを見ない ひとりきりだ 声がかかるまで ひとがいた しらないひと わらっている こちらもわらう うそでした 路(みち)にはいつも ひとがいる
高野山 深い山の中に 原宿が現れた 若い男女が 列をつくった 竹下通りには 女は入れない 女人堂を出て 山道を十五分 女たちはこぞって 首をのばした 竹下通りが 遠くに見えた 男たちは自由に 行き来はするが 念仏の真似事を 繰り返すばかり それでも原宿は 大いに賑った 人の興味は...
渋谷路紀行 てくてく歩く 柿ノ木坂を通る てくてく歩く 鷹番を通る てくてく歩く 目黒川を渡る てくてく歩く 山手線が光る てくてく歩く 恵比寿の雑踏 てくてく歩く 猿楽橋をくぐる てくてく歩く 渋谷の人に会う
沢登り くるぶしほどもない沢を 歩き疲れてなお歩く 青き葉と葉の大群は 日の光をも撥ねつける この薄き水の源の 辿り着くべき時知らず 苔むす岩に滑らせて 洗礼浴びる尻幾度 枝から枝に旅ガラス ないてどうなるわけもなし 光差す杖手で探り 削れた苔は流れゆく
ねずみ坂 てくりてくりと登ってみる 細く曲がりくねっている 中腹くらいにさしかかり 右のほほに風が当たる 視界は突然ひらけた 大きな盆栽を見るようだ 梅の花が紅に白に 桜は蕾の色に霞む 朝陽は惜し気なく注ぎ 生まれたばかりの葉を照らす ああのどかけき風景 ああのどかけき陽春 こう...